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みずうみ/川端康成
評価:
川端 康成
新潮社
¥ 432
(1960-12-25)

text by uematsu

川端康成、1954年の作品。
今さらならがらに思うのだけれど、川端康成など近代の文学作品を『日本の名作』的なくくりで小学校高学年から中学あたりで読ませるのは、ちょっと無理があるのではないかと。
僕もなんとなく学校で勧められた夏目漱石、川端康成、芥川龍之介など、いわゆる文豪の作品を読んだけれど、さすがに中学生ではあの面白さはなかなかわからなかった。わかったとしても表面的な部分ばかりで、後々読み返すと「こんなに深い内容だったのか」と気付かされることが多かった。
でも、多くの場合は子どもの頃に読んだ文豪の印象、つまり「難しい」「わかりにくい」「しみったれている」などなどに引っ張られて、二度と手に取らない、ということになっているようだ。

でも、いまだからこそ面白い作品がいっぱいあるんだけどなあ、というわけで、川端康成の『みずうみ』を読んでみた。

この作品は、今で言うストーカー体質の男を主人公に据えていて、終始、男の奇行と妄想が交錯し、物語はスリリングに展開していく。

子どもの頃、近所に住んでいた少女、やよいとのやりとりで女に目覚めていく主人公。国語教師となってから、教え子の後を付け関係を持ってしまうエピソードや、犬の散歩をしている少女をつけまわし、その恋人に押し倒されてしまう話など、目まぐるしく主人公がつけ回す相手が入れ替わる。
さらに、そこに妄想のような幻覚や幻聴があり、語られている物語が夢なのか現なのか、その境界線が曖昧になってくる。

文庫本で180ページ足らずの長編とも言えない作品だが、その密度が濃く、読み終わったあとの退廃的な空気は半端ではなかった。
| 小説 | 14:31 | comments(0) | - | pookmark |
その女アレックス/ピエール・ルメートル
評価:
ピエール ルメートル
文藝春秋
¥ 929
(2014-09-02)

 text by uematsu

普段、あまりミステリーなど読まないのだが、「ミステリー初の6冠」という帯に惹かれて『その女アレックス』を購入。読み始めて、一気に読み終えてしまった。面白い、と言っていいのか、でも、決して退屈ではなく、つまらないわけでもなく。だけど、やっぱり面白いのかといわれると、面白いとはいいたくない、という気持ちになってしまう。

この小説の面白さはその構造にある、とすると、この小説で描かれていることが決して必須ではない、と思えてしまうのだけれど、どうだろう。

ライトノベルにしても、こういったミステリーでもそうなんだけれど、どうしても、もっとそこはかとない日常でいいのに、と思ったりするのは、単に僕の好みの問題、ということなんだろうか。


| 小説 | 22:12 | comments(0) | - | pookmark |
営繕かるかや怪異譚/小野不由美
評価:
小野 不由美
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,620
(2014-12-01)

text by uematsu

『屍鬼』を読んだのは何年前だろう。怖かったなあ、あの小説。特に前半の理由がわからない間に、死人が甦るというのが本当に怖くて、当時、大阪に住んでいて、東京出張でもずっと読みふけっていたら、新宿のホテルで窓の外から人の声がするという現象に悩まされた。だって、18階の部屋なのに、窓のすぐ外で声がするんですよ。そんで、窓を開けたら、階下はやたらと広いお墓だったという…。いかん、怖いことを思い出した。

で、同じ作者の最新作をたまたま先日書店で見かけて買ってしまったのだった。この一作前の作品『残穢』という小説のドキュメンタリータッチな内容がやたらと怖くて、やたらとスリリングで、面白かったので、同じ路線を突き詰めるのかと思っていたら、今回は意外とオーソドックスだった。

オーソドックスというのは、オーソドックスに怖いということであって、怖くないというわけではない。というか、かなり怖い。個人的には、路地をジワジワと攻め入ってくる喪服を着た女という話が、怖い。その女が現れるのは、必ず雨の日。そして、必ず鈴の音が聞こえる。これだけで怖い。この人の巧さは、まっすぐに恐怖の根元にたどり着かないってところかもしれない。よくある想像で、怖さの根元にたどり着きそうになるのだけれど、実はもっとシンプルなところに理由があった、というものが多くて、そこが妙に腑に落ちて、よけいに怖い。 
| 小説 | 21:43 | comments(0) | - | pookmark |
快挙/白石一文
text by uematsu

最近、白石一文という作家の小説を読み続けているのだけれど、ずっと妙な違和感を感じている。テーマや登場人物にはとても共感を持つことができるし、小説そのものがもつニュアンスのようなものもとても好きな世界だ。
にもかかわらず、どこかに「違うかも知れない」という疑いのようなものが残る。それが何なのかがわかりにくい。わかりにくいけれど、たとえば、読み進めていくときに、ふとでてくる詳細な状況説明のほんのワンセンテンスに感じる違和感のようなものがある。
なんとなくだけれど、その違和感の根元にあるものを探しながら、白石一文作品を読み進めているような、そんな気もしている。 
| 小説 | 00:40 | comments(0) | - | pookmark |
暗渠の宿/西村賢太
評価:
西村 賢太
新潮社
¥ 432
(2010-01-28)

 text by uematsu

西村賢太はおもしろい。久しぶりに存在そのものがドキドキする。芥川賞を受賞した『苦役列車』も面白かったが、受賞したときに発した「そろそろ風俗でも行こうかな」という言葉も話題をさらった。
私小説作家として、近しい存在なのは車谷長吉かもしれない。しかし、西村賢太には車谷長吉にはない疾走感のようなものと、可愛げのようなものがある。
風俗に行き、金をだまし取られ、やっと手に入れた恋人らしき女にも暴言を吐き、暴力をふるう。そして、泣き疲れて眠っている女を眺めながら、その不憫さに涙し、同時に、女の以前の男関係に思いを巡らし嫉妬に身を焦がす。
本当にどうしようもない男だけれど、男は誰しもそのどうしようもなさを内包しているものだし、そのどうしようもなさを隠し持つことでなんとか大人のふりをしていたりするのかもしれない。
だとしたら、この凶暴な子供っぽさをもった大人とでも言うべき、西村賢太の存在は恐るべきもので、こんなのが矢継ぎ早に小説を発表しつづけると、大人のふりをして我慢している男たちが、「俺だって、この小説の主人公のように、素直に生きてもいいんじゃないか」と思ったらえらいことになるだろう。
いやいや、それができるのは、それこそ私小説というものに身を投じた西村賢太だからこそできるものであって、先ほど可愛げと書いた印象が、実は恐ろしい作為に裏付けされているのだということに気付いてうなだれてしまうのである。
| 小説 | 00:21 | comments(0) | - | pookmark |
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